リサーチ

中高生のデジタルコンテンツ利用と若年層リサーチの課題

この投稿は ノンプロ研のメンバーが日替わりで12月25日までブログを更新する企画、 ノンプロ研 Advent Calendar 2018 の18日目の記事として投稿しています。

モバイルに関するリサーチに定評のあるMMD研究所がアプリリサーチで若年層に訴求するテスティーと協業して

中高生のデジタルコンテンツの利用と消費調査
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1754.html

という貴重なリサーチを公開していたので紹介します。

貴重なと言ったのは、2つのポイントがあります。

・無料でけっこうな部分まで紹介している
・若年層に特化したリサーチ

という2点です。

リサーチ会社が自主調査を無料で公開するのはおもに2つのパターンがあります。
ひとつは、一部分を公開し、全部見たい人は有料レポートを購入してください、というパターン。
もう一つは、自社のリサーチサービスを使ってもらうためのPR活動の一環として行うもの。

今回はローデータは有料販売しているが、公開している部分でかなりことは分かるので、一つ目はあてはまらない気がする。
二つ目だが、今回はMMDとテスティーの協業リサーチなので、どっちのアピールになるのか微妙。
というわけで、若干「誰得?」な自主調査なのですが、部外者の閲覧ユーザーは得な資料なので、さっそく中を見てみましょう。
登録すればPDFでまるっとダウンロードできますが、登録しなくてもほとんど公開してくれてる親切設計です。

 

中高生で有料コンテンツにお金を払ったことがある人はわずか14%!

Q:あなたはスマートフォンを利用して、有料のダウンロードやデジタルコンテンツの購入をしたことがありますか?※AmazonのギフトコードやLINEのポイント交換などを除く

 

設問が「この半年」とか「1年以内に」と期限を区切っていないため、スマホを持ってからこれまでに、と解釈して回答した人が多いと思います。
それで14%。そりゃ、漫画や音楽など若年層向けのエンタメコンテンツで売上作るの大変だわ。

 

現在利用している無料コンテンツが有料化した場合でも、「利用を検討する」人がこちらもわずか14%

Q:現在利用している無料のデジタルコンテンツが有料になったらあなたはどうしますか?

 

えーとですね。日本人は優しいというか、忖度力が高いというか、リサーチで商品コンセプトなどを提示した場合、
1.必ず購入したい 2.購入を検討する 3.どちらか分からない 4.購入しない
というような選択肢に分けた場合、(もちろん商品や調査ジャンルによりますが)「お前絶対買わないだろ」っていうような人でも、けっこうな割合で「検討する」とか答えちゃうんですね。

しかーし! 中高生は新しい世代の感覚思考法なのか、それともこれから忖度力を身につけた薄汚い大人になっていくのか分かりませんが、「検討する」という文言にもかかわらず14%!

もはや「現在利用している無料アプリ、無料サービスが有料化された場合、課金してでも使いたいアプリやサービスはありますか」
くらいの文言でハッキリ聞いて、若年層に対するデジタル課金のハードルという極北をしっかりと感じたかった、とすら思います。

そして

フリマアプリ等でお金を稼いだことのある中高生は18%

Q:あなたはフリマアプリやネットオークションなどを利用して、お金を稼いだことはありますか?

つまり、ゲームで課金したり、Kindleで漫画買ったり、iTunesで曲買ったりしてる中高生よりも、メルカリでモノ売ってる中高生の方が多いってことですよ!

なるほどと思う反面、エンタメコンテンツを売る側としてはなかなかしんどい。
漫画とかCDとか、発売日に買って読んだりリッピングしたりして次の日メルカリに出せば、レンタルするより安い」みたいな若年層のコメントを聞いたことがあったのですが、まんざらレアなケースでもないようです。

また、

課金経験者の決済手段はギフトカードが約7割

Q:あなたが有料デジタルコンテンツの課金や購入の際に利用した方法をお選びください。(複数回答可)

 

プリペイドカード(iTunesカード、Googleプレイなど)が7割、キャリア決算が2割(複数回答可)、親のクレジットカードが16%という結果。
若年層向けのECをやってる方などは良く分かっているでしょうが、オンラインでもオフラインでもクレカを日常的に使っているオトナたちは決済におけるハードルというのを結構忘れがちです。コンビニなんかでiTunesカード、Googleプレイとかよく売ってるけど、買ってる人いるの? 友達になりすました中国人にLINEでダマされた人だけじゃないの? とか思ってる方いるかも知れないですけど、クレカ持てない中高生は使うんですよ。(ま、お金使う人の全体が少ないけど)

ほかにも支出額とか、無料で登録すると読める情報も少し増えるので、興味のある方は是非登録してPDFをダウンロードしてみてください。

ただこの調査、回答者の中学生と高校生の比率はほぼ半々なのですが、男女比が8割女性になっていて、調査結果もとくにウエイトバックをかけていないと思われます。

ウエイトバックとは集まったサンプルを実際のマーケットや調査対象の全体に照らし合わせて(多くの場合国勢調査など)、回答の重み付けを調整することです。

今回の例で言うと回答の8割が女性だけど、男女半々になるように調整するということです。逆に言えば、このレポートは女性の意見が強めに反映されているとも言えます。

また、回答者の居住エリアは明らかにされてないので、回答者が都市部に集中してるのか、逆に地方郊外が多いのか、比較的バランスがとれているのか全く分かりません。

こういうと、「この調査はデタラメなんじゃないか、なんでそんなのが『貴重な』調査なんだ」と思う人もいるかもしれません。

それを割り引いてもなお貴重だというのは、冒頭に挙げた

若年層に特化したリサーチ自体が少ない

からです。

リサーチは、インターネットの登場でそれ以前と比べると非常に手軽なものになりました。費用も、回答収集にかかる時間も分析にかかる時間も圧倒的に減りました。

インターネット・リサーチは、黎明期こそ「ネットで会員登録して回答ができるような人の時点でバイアスがかかっている」と言われることも多かったですが、ネットの普及とともにバイアスがかかっている声も少なくなりました

個人的な体感としても、ちょっと前までだったらシニア層は「シニアだがパソコンを使える」という人になってしまうため偏っていた印象もありましたが、最近は65歳くらいまではサンプルも取れるしそこまで偏ってない印象です。

ところがここ数年、10代から20代前半の回答を集めるのに非常に苦労するようになりました。リサーチ会社の回答モニターになかなかなってくれず、なってくれたとしても都度配信されるアンケートになかなか答えてくれないようです。

理由のひとつは、従来のリサーチ会社のリサーチにおけるスマホ対応の遅れです。
ようやく最近レスポンシブデザインに切り替わり、アプリにも力を入れるようになってきましたが、それもここ1年程度の話です。

WEBサイトアクセスでスマホ比率がPCと逆転してからずいぶん長い間、リサーチ業界はPCベースのままでした。横に長いマトリクス型の設問をスマホサイズに変形するのが難しい、分岐などの条件設定(Q1で1と答えた人だけ設問を表示するetc)などをスマホの独自ブラウザで制御するのが難しい、などの理由だったと思われます。

そのようなUI上の問題だけでなく、データに基づかない仮説ではありますが、若年層がリサーチに協力しない理由は以下のようなものが考えられます。

若年層はメールを見ない

最近になってアプリでの告知も増えてきましたが、これまでずっとリサーチの告知(パネルへの回答依頼)はメールでした。
コミュニケーションはSNSで済んでいるため、メール=企業からの宣伝が来るもの、になっている可能性がありそもそも頻繁に見ないのかも知れません。

長い説明文のようなカタい文章を読まない

リサーチの場合、状況や対象を限定するために質問文に付記する説明が長くなる傾向にあります。例えばですが
「朝ご飯を食べる頻度を教えてください。 朝ご飯はおおむね9時前に食べる食事とし、朝食と昼食を兼ねたいわゆるブランチのような形態はここでは含みません」
というように、質問文よりも付随する文が長く、そのような冗長な説明文を無意識的にスルーするようになってる気がします。

実名登録回答への不安・不信

リサーチのパネル(回答者)に登録する際は、住所・氏名・生年月日・職業・未既婚・年収といった細かい個人情報をまず登録します。この辺の、パネル登録自体へのハードルがさらに高くなっている印象です。

マーケティング対する嫌悪・不信

「ステマ」という言葉が流行ってからずいぶん時間が経ちますが、マーケティングや宣伝に対する嫌悪、それを行う企業に対する不信というのがどんどん強くなっている気がします。この辺はまた別の機会にじっくり検証したいです。

ポイント取得のコスパが悪い

リサーチに回答するとポイント(一定数貯まると現金やギフトに交換できる)をもらえます。設問の数によって変化しますが、ひとつのアンケートでだいたい数円から数十円のものが多いです。上記の面倒くささや個人情報の開示ハードルを越えた割に、トータルでのコスパが悪いと受けとめられるようになっているかも知れません。

これらは若年層に限らず世の中の空気、時代の流れがそっちに向かっている気がしますが、とくに若年層ではその傾向が顕著という感じです。

 

そんななかでこの「中高生のデジタルコンテンツの利用と消費調査」は若年層に特化したリサーチだったので注目しました。

このパネルを集めているのはテスティという比較的新しい会社のようです。LINEもLINEリサーチでリサーチ産業に参入しましたが、これまでリサーチの実績やノウハウを持っていない会社がパネルを集めてリサーチ業界で存在感を持っていく可能性は大きいですね。
(今やリサーチ業界最大手のマクロミルも、インターネット以前から調査をやっていた会社からは、設立当時は「あんなのリサーチではない」と言われていたと聞きます。)

みなさんも若年層に特化した調査結果をメディアで見たときは、どのような会社がどのような対象に実施したリサーチか確認してみてください。では!